季節の移り変わりとともに仕事が落ち着いてきただいたいいろです。
あーあれだ・・・急に仕事が落ち着くと、
あれ・・・?こんなことでお金貰っていいの・・・?
もっとやらないとダメなんじゃ?
と思い始めるから人って不思議です。
そんなお仕事が忙しい2023年3月前半、甲斐駒ヶ岳に登ってたんですよ(前回と同じ書き出し
■ 甲斐駒ヶ岳とは
南アルプスに属する標高2967mのお山です。
アクセスルートは二つ
- バスを使って北沢峠から登る(短い・危険も少ない・人も多い)
- バスを使わずに黒戸尾根から登る(長い・危険も多い・人は少ない)
バスは夏から秋にかけてしか運航していません。
なので、冬登る場合は必然的に長く危険で人も少ない黒戸尾根から登る必要があります!
そう黒戸尾根は長いんです!
スタート地点から甲斐駒ヶ岳山頂までの距離は約9km、コースタイムは約10時間。
しかも長いだけではなく山頂手前には核心部と呼ばれる雪壁を直登するポイントがあり危険度も高い・・・
なぜそんな山を選んだのか?
それは登ってみたかったからです。
ということでどんな工程を歩んだのか振り返ってみます。
■ 黒戸尾根は長い
スタート地点は尾白川渓谷駐車場。
3月の頭ともなると雪の影響はなくノーマルタイヤでも問題ない雰囲気です。
駐車場にはトイレが併設されているのもグッドポイント。
憂いなく出発できますね。
というのも駐車場を出てから七丈小屋まで補給ポイントはなく、当たり前ですがトイレもありません。
まさにここが最後の砦。
スタートしてからしばらくは綺麗に整備された道を歩きます。
10分ほど歩くと駒ヶ岳神社に到着です。
時間はまだ7時。だいたいいろ達以外の参拝客はおらず、静かな境内を熊鈴鳴らした登山者が騒々しくお祈りします。
どうか・・・どうか無事に下山できますようにッ!!!
祈るのは登頂成功ではなく無事の下山なあたり、だいたいいろのチキン気質がよく表れてますね(
駒ヶ岳神社を越えるとすぐに吊り橋が登場します。
吊り橋を越えてから本格的な登山がスタートします。
標高は余裕の1000m以下。
里山然とした登山道、一歩踏みしめるたびにクシャクシャと音を鳴らす落ち葉の感触が気持ちよく足取りは不思議と軽いです。
というのも甲斐駒ヶ岳の標高は2966m。
駐車場からの標高差は約2000mという長丁場。
気持ちが後ろ向きにならないはずはないのですよ。
でも暖かい日差しと柔らかい落ち葉のせいかどこか暗くならず歩いていけます。
駆け抜けよう、希望をつれて。そんなfirst impressionを与えてくれます。
大きな岩もないのでペースを上げられるかもと思っていた矢先、足元にはなんと氷・・・
駐車場を出て約1時間くらいなので標高1300mくらいでしょうか。
登山数日前にかなりの量の雨が降ったらしく、その雨水が凍り登山道全体をスケートリンクのように覆っていました。
アイゼン付けるほどではないけど登山靴だけだと滑る・・・
そんな少しやっかいな道を進んでいきます。
氷張ってないところを歩いたり、滑らないように足を水平につけたりと気を使う必要がありペースアップできず・・・
途中、木の隙間から目的地である甲斐駒ヶ岳が姿を見せます。
山頂付近はさすがに真っ白です。
茶色の落ち葉で覆われた登山道とは世界が全然違いますねー
駐車場から約1時間半。
笹の平分岐を通過します。
現在の標高はどうやら1473m。
1時間半で約500m登り、残り1500m。なんだかんだ言いながらいいペースで登れてます。
等高線は割と密集しているので急こう配だと思いますが、標高が低いおかげか疲労感は軽微。
まだまだやれそうです。
登山開始から約2時間。
足元が氷から雪に変わり始めます。
標高1600mを越えたあたりからは基本的に急こう配が続きます。
足に力をいれることも多くなるので、滑って転ぶのも馬鹿らしいのでサッとアイゼンを履いてしまいます。
よしザックが軽くなった(足は重くなった
ちなみにだいたいいろは硬くて重い靴の方が好みです。なのでアイゼンをつけた状態の感触が割と好きだったりします。
南アルプスらしく樹林帯はまだまだ続きます。
像みたいな岩+木を越えたら1/3が終わったと思ってください。
まだ2/3も登れますよッ!
登山開始から約4時間半。
最初の難所である刃渡りがだいたいいろ達に襲いかかりますッ!
刃渡りという名称からわかる通り、道幅がごく狭く切れ落ちたナイフリッジ状の地形。
しかも雪の下には岩・・・
アイゼンを付けている状態なので岩に足を引っかけないよう注意して通り抜けます。
気分はようせいのふえで眠らせたゴーレムの横をそっと通り抜ける勇者。
実際は倒しちゃうんですけどね・・・その後の展開を知ってしまうと倒さずに通り抜ける方法を残しておいてほしかったな
その先には急な階段もあり油断できない道が続きます。
刃渡りと階段ゾーンを抜けてからしばらくは緩い登り坂が続きます。
この後の展開を考えるとここが息をつけるエリアになります。
なんでかって?
それはな・・・緩い登りが終わると100m以上の下りが待ってるからだよ・・・
つまりな・・・登り返しが・・・ってこの巨大な岩登れっていうの???
ちょっとした登り返しってレベルじゃねーぞ!
だいたいいろの叫び声が谷間にこだまします。
その大岩の麓がおそらく5合目小屋跡です。
下に見えるお社で無事をお祈りします。
黒戸尾根はもともと信仰の道。
雪に埋もれてしまっていてあまり目についていませんが、登山道の至るところにお地蔵様やお社が設置されています。
昔の人たちに見守られている感じがあり、だいたいいろは好きな道です。
ではでは岩場の攻略に・・・っていきなり直登かよ・・・
出だしから飛ばし過ぎでは?
いったんストックはしまい鎖その他を活用しながらの登りになります。
ここを登山道とした人たちがいたわけですよね・・・
道を切り開いてくれた先人達には頭が下がる思いです。
階段がないところも笑ってしまうくらいの急登が続きます。
木製の隙間が空いた橋を越えることもあり、まったく気を抜けるポイントがありません。
五合目小屋跡を越えてから約30分。
七丈小屋までの最後の難関が姿を現します。
アイゼンを付けた状態で垂直の岩をどうやって登れと?!
そんなことを叫びたくなる岩場の登場です。
もうね・・・ここはね・・・パワーで乗り切ってください(
それしかありません。
岩場を越えてから登山道は緩くなります。
そして見えてくるのが・・・七丈小屋です!
登山開始から約5時間半での到着となりました。
時刻は12時半前・・・山頂が狙えないわけでもないですがだいたいいろは待機を選択します(なお同行していたdocさんは山頂へ行った
たまに思うんですけど、この人の体力値ってどうなってるんですか?
同じ職業、同じ働き方してるのにこんなに差があるってことなに?だいたいいろの素体が悪いんですかね・・・
小屋においてあったTJARの写真集などを読んでいるうちに晩御飯の時間です。
冬季安定のカレーです。
冷えた体にカレーの辛さが沁み渡ります。
■ 核心部を越えて
時刻は朝4時半。
稜線で朝日を待ちたいため少し早めの出発です。
当然ですが周りは真っ暗です(
といってもツアーの人たちも同時刻に出発しているので一泊二日で甲斐駒ヶ岳山頂を狙うなら普通の時間帯で特別早いというわけではないようです。
途中、めっちゃ怖いところがたくさんあったのですが真っ暗なので写真なし。
帰り道でちょっと話してみようと思います。
そんなこんなで時刻は5時半。
雪壁を直登するいわゆる核心部を越えたところからの1枚。
朝焼けは黄金色です。
淵に立って撮影しても底が見えないあたりに核心部の怖さを感じ取ってもらいたいです。
こんなに激しい私がいたってくらい心臓がバクバクしました。
鋭く尖った山頂が見えるということはこちらは地蔵岳かな?
35mmくらいで切り取るのがベストだと思いますが残念ながら28mmの単焦点・・・ッ!
こんなに景色がいいなら無理してでも標準ズームを持ってくるべきだった。
油断できない道はまだ続きます。
場所によっては雪が凍っておりアイゼンの効きがいまいち・・・
浅く雪の上に乗るだけの感触に少し寒さを感じます。
振り返っての1枚。
雲海から頭を出しているのは赤岳とその一帯でしょうか。
あちらも気持ちのいい朝を迎えてそう。
小屋を出てから約1時間半。
山頂手前で日の出を迎えます。
険しい道を歩いてきて冷えた気持ちと寒さにさらされて冷えた体の両方を温めてくれるような日の出です。
山頂はもうすぐそこです。
一番印象に強く残っているのは山頂手前から見える北岳と摩利支天の組み合わせです。
同じ南アルプスという山域にありながら、甲斐駒ヶ岳から繋がる稜線が見えません。
南アルプス縦走の難しさはこんなところにあるのかなぁ・・・
富士山と地蔵岳
時間帯もあってかどこか神々しい雰囲気をまとっています。
登ってきた道を振り返ります。
辿ってきたトレースが朝日に照らされてよりはっきりと浮かび上がります。
雪山の魅力は色々あると思いますが、
- 自分が歩いてきた道が明確にわかる。
- はっきりわかる分だけ確かな達成感が味わえる。
の二つは間違いなく上げられます。
七丈小屋を出てから約2時間。
甲斐駒ヶ岳山頂に到着ですッ!
駒ヶ岳神社に地蔵岳、太陽に富士山・・・見たいものが全て詰め込めるいい時間に登ってこれました。
そんな選択でも怖れないって気持ちで登ってきてよかった・・・
お隣の仙丈ケ岳。
山頂付近の傾斜が少し緩やかなせいか、こちらより雪が多そうです。
神社の影で一息。
距離と時間はそれほどでもありませんが緊張からか消耗は激しめ。
安定のゼリー系飲料でカロリー補給し、すぐに下山を開始したいと思います。
日が昇り気温が上がってくる前に下りたいのでちょっと駆け足気味です。
その理由は後程・・・
雲のかかり方が幻想的なせいかどこか日本ではないような雰囲気を感じます。
来た道を戻る形になりますが・・・まあまあの高度感ですね。
左側に滑り落ちたら終わりだなぁ・・・
帰り道のご褒美はこれ。
二本剣と富士山のセット。
ガイドブックやwebサイトで必ず見ることになる甲斐駒ヶ岳を象徴する風景ですね。
二本剣を越えたらすぐ見えてくるのがこの看板です。
そう・・・ここから下は写真を撮ることも不可能な角度の斜面です。
アイゼンとピッケルをしっかりと使って下っていきたいと思います。
この場所を雪がしっかりと凍っている朝の時間帯に通りたかったので、駆け足気味に山頂を後にしたんです。
垂直に下る時間は約20分ほど・・・
なんとか無事にクリア・・・
下りてきた道を振り返ります。
どこを下ってきたのかさっぱりわからんです。
右上の尖った岩を向かって右側から回り込み岩の切れ間から左へ、そのあとは岩の隙間を下りてくる
というルートだったと思います。
核心部を越えた後も要注意ポイントは複数あります。
足場となるのは岩。雪は薄くアイゼンはききません。
垂れ下がってる鎖をうまく使い下りました。
短いながらも鎖を使った垂直降下。
下側にしっかりとした重りを付けてくれているので非常に降りやすい。
足場が狭くなるとこもあり。
核心部を越えたとしても油断できない場所が続きます。
山頂から約1時間で8合目まで戻ってこれました。
改めて振り返ってみても・・・どこが登山道かさっぱりわからないですね。
残るは楽しい樹林帯歩きです。心躍ります(白目
とはいうものの、甲斐駒ヶ岳で滑落事故が起きたのはこのあたりです。
傾斜は急、しかも見通しの悪い樹林帯、そこに夏道と異なる下山ルート。
道を間違えて事故を起こす要素は揃っているので登りの時につけたトレースを間違いなく辿って下りていきます。
8合目から約30分ほどで七丈小屋に到着。
デポさせてもらった荷物を回収して、ココアなんて飲んで休憩しちゃいます。
朝早くから軽食やってくれるのは本当に助かります。
■ 黒尾根は長い(2回目)
一息ついたところで・・・いざ我が家へッ!
と言いたいところですが目の前には全長約7km、時間にして約4時間かけて下りる黒戸尾根・・・
ゲンナリしながら樹林帯を抜けていきます。
登ってきた道を下るだけなので飽きは来ています。
でも雪と岩のミックス地帯があったり、
急な階段を鎖を頼りに下りたり、
橋を越えたりしないといけません。
緊張が解けているので事故起こしそう・・・
約40分ほどで5合目小屋跡を通過。
コースタイム通りです。
そこからちょっとした登り返しが始まります。
下りモードの体にはちょっとした登り返しでもダメージ大きいですよね。
後ろを振り返れば山頂がちらり。
ずいぶん下りてきたように見えますが標高はまだ2200m。
あと1000mも下りられます。わーい、やったぁ(白目
微妙な登り返しは約30分ほどで終わります。
150mくらいは登ってるってことですね・・・
あとはトントンと下りて・・・
トントンと・・・
おりて・・・
とならないのが黒戸尾根です。
登りでも肝を冷やした刃渡りの登場です。
雪のすぐ下には岩場が控えており、アイゼンの使いにくさは下りも変わりません。
勢いがつく分、下りの方が気を使います。
刃渡りを越えてしまえばあとは難所なしです。
純粋に5kmほど残っている下り道を楽しみましょうッ!!!
ほとんど下りてないじゃん・・・とか絶望しました。
このあたりから無心です。仏の心で下山です。
登山道が凍っている部分もあるのであいかわらず注意は必要。
小屋を出て約2時間半。
標高もかなり下げたこともあり雪と氷は大分少なくなりました。
このあたりでアイゼンを外してスピードアップを図ります。
歩くとシャクシャクと音がなる小道がなんか懐かしいです。
周りの景色がアルプスから里山に変わりましたね。
小屋から約4時間。
空気が濃くなり頭がはっきりしてきたころ、最初に渡った吊り橋が見えてきます!
吊り橋を越え、スタート地点でもあった神社でお礼をします。
無事下山することができました!ありがとうございました!
核心部の写真がないことで本当に注意する場所が伝えられないなぁと思いながらのゴールです。
■ さいごに・・・
黒戸尾根は長く、険しい・・・
稜線に出てからも雪壁を直登するなど油断ができないポイントが続きます。
けっして登れない道ではなく十分な雪山経験を積んで、注意して登れば攻略は可能。
肉体的に恵まれていないだいたいいろ達でも登れたのだから、それは間違いないと思います。
趣味の中に緊張感を求めるなら一考の価値があるお山です。