
お仕事をしてると予定通りに進まないことが多々あって悩むことってありますよね。
「そこまで深刻に考えなくていいか。どうせ相手も一月後には忘れてるし」
という精神で生きてるだいたいいろです。
こんにちは。
基本的に下調べと事前準備は怠らず登山に挑むタイプなので、
「予定通りの登山にならなかったん-」
と思うことは非常に少ないのです。
時には例外というものがありまして・・・2024年の3月に挑んだ鳳凰三山縦走はびっくりするくらい予定通りに終われませんでした。
正直思い出したくないくらいツラい登山だったのですが、何が予定通りにならなかったのかを少しまとめてみました。
■ 鳳凰三山とは?
南アルプスに属するお山です。 2023年のGWにも登っており、今回で2回目の登場です。
繰り返しになりますが鳳凰三山という名前の山はなく地蔵岳・観音岳・薬師岳の三山をまとめて鳳凰三山と呼びます。
前回は御座石温泉から登り、鳳凰小屋を経由、その後に地蔵岳・観音岳・薬師岳へ回り鳳凰小屋へ戻るルートでした。
今回は逆順になる夜叉神峠からスタートして南御室小屋・薬師岳小屋を越え、鳳凰小屋側へ下りていくルートを選択。
宿泊は初めて冬季小屋を選択。
チャレンジ要素が強い行程となっています。
■ 薬師岳小屋までは距離が長い・・・
季節は残雪期の3月、時刻は朝の7時、場所は夜叉神峠登山口。
3月は営業小屋のない山域ながら車の数はそれなりです。

登山届を出していざスタートです(webで提出済みなんだけどね

まず目指すのは登山口から約1時間で到着できる夜叉神峠小屋。
葉がすべて落ち、南アルプスとは思えないすっきりとした樹林帯をすり抜けて進みます。

3月の南アルプスってもっと雪が少ないと思ってたけど・・・普通に雪あるな。

予定通り1時間で夜叉神峠に到着。
小屋の前で小休止、目の前には白根三山の雄姿が!

よい休憩スポットです。
樹林帯はまだまだ続く上に、夜叉神峠からしばらくは下る・・・ということは・・・

・・・登り返しが待ってます!一度上げた標高を下げるのは条約違反だろ・・・!
定番の叫びですね。

スタートこそ見通しのある登山道でしたが、そこは南アルプス。
途中からは常緑樹に囲まれ、展望は一切なくなります。

まだ3月、それも樹林帯の中を進むので汗はかかないけど寒くもないちょうどよい気温。
バテることなくもくもくと標高を上げていきます。

夜叉神峠から歩くこと約1時間、コースタイムを少しだけ巻いて杖立峠に到着です

次の目標地点は苺平、標識を見るとどっちなんだよと思う2時間30分(1時間30分)の表示。

登山開始してから約2時間、スカッとはれるような展望はまだまだ先です。

樹林帯は変わらず続くのですが・・・
少し隙間が空いてきました。
その隙間から見えるは白根三山。

杖立峠から約1時間でケルンを発見します。
苺平か!!!と喜びますが、残念、ただの中間ポイントです・・・ふぅ・・・

裏切られた期待で心が死にそうですが、この辺りは空が広いです。
青空が見えるだけで足取りもどこか軽くなりますね(冬用の登山靴 + アイゼン * 雪の重量を感じながら

少し暖かい声援も貰えたので頑張って足を進めていきましょう!

途中のケルンから苺平までの約30分はまたうっそうとした樹林帯の中を進むことになります。

登山道入り口から登ること約4時間。
今度こそ本物の苺平を通過します。

ほぼ展望がない中を歩く上に距離が長いので体力・メンタルともしっかり消費してます。 ここでも小休止。
息も整ったところでリスタート。
歩き始めてすぐに見えるこの15分は信用できるやつです。

登山開始から約4時間30分、苺平から見て少し標高を下げた先に見えてくるのが南御室小屋です。

ちなみに南御室小屋には冬季トイレがあります。
ここで社会性を回復させましょう。
こちらは冬季小屋、中にお布団が用意されていましたがおそらく冬は耐えられません。
素直に冬用の寝具を持ち込みましょう。

登山道は小屋の左側を巻くように続いています。

南御室小屋まではどちらかというと緩やかだけど距離が長い道のりでしたが・・・
ここから先、登山道は様相をかえてきます。

かなり急な登りが続く上に・・・雪が!深い!!

いくつもの吹き溜まりを越えてなお、目の前には雪の壁・・・!

1時間も登ってないのにこちらの体力をガンガン奪っていきやがる。
途中、この岩が見えたら中間点です。

「もう半分すぎた!」そんな気持ちだけでもダメだし、力だけでもダメだし・・・
急登でメンタルもダメージを受けている模様・・・

それでも南御室小屋を出てから約1時間・・・ふいに青い空が目に入ります。

無事に稜線に出た模様です!

目の前には北岳の雄姿!
風はまったくなく、穏やかな気持ちで景色に見とれてしまいます。

これを・・・こんな景色を見るために山に登ってたんだよなぁ・・・
本日の目的地である薬師岳小屋まではあと20分。
砂払岳を乗り越えて・・・

こうひょいひょいと・・・

ひょいひょいっと・・・

いかないですね。
薬師岳小屋の裏は急峻な岩稜帯、アイゼンつけた状態だと非常に歩きにくい。
岩稜帯を越えると見えてくるのが薬師岳。
ここから先は穏やかな稜線歩きが約束される景色だなー

視線を少し下げると本日の目的地、薬師岳小屋。

13時30分、登山開始から約6時間30分での到着です。

そして本日泊まる冬季小屋がこちらです。
見えていない奥側に階段があります。

中の写真は撮影していませんが断熱材が張られており、寒さはあまり感じない快適な空間でした。
広さはなく、泊まれて4人というところです。念のためのテントはあった方が安心だと思われます。
■ 夕方の風は優しい・・・
インスタント系の食材でサッとお昼ご飯をいただき、しばし休憩した後に待っているのは・・・
そう夕焼けの時間です。
せっかく稜線の小屋で夜を明かすのなら余すところなく景色を楽しみたい。

ということで快適な寝床を抜けだして、観音岳まで足を伸ばしてみることに。
傾き始めた太陽に照らされる雪面。

小屋の後ろにそびえるのは砂払岳。

風紋で彩られた登山道を登っていきます。

薬師岳小屋から観音岳まではゆるやかな登り道です。

風もないのでただただ気持ちのいい山歩きが楽しめます。

薬師岳小屋を出てから約15分。
薬師岳山頂を通過します。

風で飛ばされてしまったのか山頂周辺に雪はなし。
やわらかい砂で覆われているためアイゼンをつけたままでも問題なく歩けます。

薬師岳山頂から観音岳山頂までの稜線。
すでにいい感じの色がついていますね。

稜線だから雪少ないかなーと思いましたが、このあたりはしっかり残ってます。

もふもふの雪を乗り越えながら観音岳を目指します。
ふと視線を横に向けると夕日で影になった北岳が目に入ります。
雪面のコントラストが視線を奥に持っていってくれます。

目指す観音岳はもうすぐそこ。
オレンジ色が強くなり始めるよい時間帯に着けそうです!

薬師岳小屋を出てから約45分で観音岳に到着です。

少し視線を北に向けた先には八ヶ岳。
あちらも雲はかかってないので綺麗な夕焼けが見えていることでしょう。

反対側に見えるのは北岳。

八ヶ岳から視線をやや西側に向けると特徴的なとんがり帽子が目につきます。
鳳凰三山の最西端に位置する地蔵岳です。

登ってきた東側にはどうやっても視線を奪っていく富士山の姿が・・・
稜線と同じオレンジ色に染まっています。

四方を見渡したところで下山開始です。
夕方の優しいオレンジ色の中を歩く意外と好きなんですよね。
1日が終わるなぁという少し悲しい気持ちと綺麗な景色見れてよかったという嬉しい気持ちがないまぜになった感じがあってよくないです?

観音岳山頂へ振り返っての1枚

日が落ち切って真っ暗になる前に小屋まで戻ってこれました。
これで一安心・・・

綺麗な夕焼けを眺めることができ満足のできる1日になりました。

■ 稜線は風が強い・・・
まだ日が昇る前の午前5時。
稜線の小屋に泊まったのに、稜線で朝日を浴びないのはもったいない。
そんな気持ちから足早に小屋を離れることにしました。

薬師岳小屋の冬季小屋は四方に断熱材が張られているのか、想像以上に寒くなく睡眠時間は十分にとれました。
しっかりと回復した体を使っていざ観音岳山頂へ!

小屋を出てから30分。
早くも西の空には太陽が灯り始めます。

甲斐駒ヶ岳方面はすでに光が差し始めています

ちょうど太陽が姿を現すタイミングで山頂に到着。

甲斐駒ヶ岳にモルゲンロートがかかり始めます

観音岳山頂付近は風が強く、舞い上げられた雪がモルゲンロートに染まり美しいです。
なお風が強いせいでクッソ寒いです。

北岳。
後ろに黒く厚い雲がかかってしまい快晴の1枚とはなりませんでしたが、山体のオレンジ色がより強く出てこれはこれでありでは?

今日歩いた道を振り返ってみます。
富士山まで一本に伸びるような稜線が印象に残ります。

写真では伝わらないと思いますが、この日の強風はかなりのもの。
長く停滞していると危険なので早々に下山を開始します。

下山といっても薬師岳小屋へ戻るルートはとりません。 ちょっとした好意があり御座石温泉さんまで車で迎えにきてもらえるため・・・なんと!厳冬期の南アルプスを縦走してしまうという豪華ルートです。
ということでまず目指すべきは地蔵岳。
地蔵岳から鳳凰小屋、そして御座石温泉へ下りていくという前回のルートをそのままなぞるような道のりを進みます。
写真からは非常に穏やかな状態に見えますが、太陽が出て大気が温められた結果、明け方からの強風は暴風に姿を変えました。
油断すると体が吹き飛びそうになるくらいの暴風で体力と体温がどんどん奪われていきます。
早く!稜線を離れないと・・・!

しかし無情にも稜線は非常に美しい。

観音岳山頂を出てから約20分で鳳凰小屋の分岐に到着。

夏場ならここから鳳凰小屋へのショートカットを図りますが、夏道でも不明瞭な道をノートレースで歩くことはリスクが高いと判断しました。
登り返しはありますが比較的道が読みやすい地蔵岳経由で鳳凰小屋に向かいます。
観音岳に振り返っての1枚。
本当に見た目だけは美しいな・・・

観音岳と地蔵岳に挟まれた鞍部にあたりますが、風は吹くことをやめてくれません。
何もせずとも体力が奪われるうえに、ここからしばらくは登り・・・ッ!

息が・・・切れる・・・!
登り切ったころには意識は少し不明瞭になっていきますが、反対に遠くに見える地蔵岳の姿は明瞭になっていきます。

風はより強さを増し、少し油断しただけでバランスを崩すほどに・・・。

そんな暴風に舞い上げられた雪に太陽が反射して美しい・・・ああ・・・これが死後の世界か・・・

体力は奪われ、意識はなくなる手前・・・もはやここまでかと思いましたが、まだ足は動いてくれています。
最後の・・・登り返しを・・・

振り返ると今迄歩いてきた観音岳の姿・・・空が崩れてきたこともあり白と黒のコントラストがより強く見えます。
ああ・・・これが死後の世界か(2回目

この辺りの記憶はちょっとなくなっていますが、どうやら無事にアカヌケ沢の頭手前に着いていた模様です。

夢遊病のようにふらふらと前へ足を進め、地蔵岳への分岐に到着。

ここを・・・ここを下りれば・・・稜線から解放される・・・強風がなくなる・・・!
そんな気持ちで見上げた空はとてもきれいでした

アカヌケ沢から地蔵岳を見る定番構図も残していたみたいです(撮影した記憶はない

オベリスクの近くまで登ろうと思っていましたが、そんな余裕はありません。

アカヌケ沢から下ったところに地蔵岳の標識ありです。

鳳凰小屋が建て替え工事中であり冬季小屋が使えないためか、トレースはなし。
道が不明瞭なので地図と見比べならがら慎重に下っていきます。

途中にトラロープあり。
ロープにぶつかったら左側に曲がりましょう。

トレースはないですがピンクテープはあり。
トレース・・・ないのかぁ・・・

歩いている人がいないので雪がフカフカです。

アイゼンだけだと浮力が足りず、足が埋まってしまい前へ進むのが難しいためワカンを持っていたdocさんに先行してもらいます。

観音岳山頂を出てから約2時間、鳳凰小屋前に到着です。

当たり前ですが小屋は冬季休業中、というか登山客が泊まる本館は建て替えに備えて取り壊し済みです。
休憩できる施設なんかはないので適当なところに腰を下ろして休憩します。
■ 下山路には道がない・・・
暴風に晒されて体がしっかりと冷えているので、ここで小休止。
お湯を沸かして体を温めます。
ここまで来たらあとはなんてことない樹林帯を下るのみ、順調に下れるなら3時間足らず。
今回の登山は終わったも同然だなー。

って思ったんですよ、本当に。
でもですね、ないんですよ、トレースが・・・ッ!

ここにきてまさかのふくらはぎラッセルがだいたいいろ達に襲いかかってきます。

誰かに作られた道を歩くなんてつまらないじゃないか?
どうせなら自分で道を切り開きたいよな!

なんて言葉で自分を偽りながら愛することが人間の正しさならば、正常を纏わせて隣で生きようか
そんな肌の裏で蠢く痛みに心が狂いそうなだいたいいろです(
なぜワカンを持ってこなかったのか・・・
鳳凰小屋が建て替えで冬季小屋が使えない。
その情報から登山者が少なくノートレースであることは予測できたはず・・・
一歩一歩がとにかく重い・・・ッ! 本当は少しずつでも前へ進んでいるはずなのに、ずっと同じ場所に留まっているような感覚さえしてきます。
なにが道で、どこを歩くのかもわからない・・・

どれだけ頑張っても歩みは進まない・・・
無駄に体力を消耗するだけ・・・

一人ならきっと遭難してるな・・・
ワカンを持ってきていたdocさんに先行してもらいながら、朦朧とする頭でそんなことを考えていました。

言葉を交わす体力もなくなり、無言の下山が続きます。

春先に下った時に「こんな高い位置にある鎖、意味ないじゃん」とか思ってましたが、意味はちゃんとありました。
雪がつもるとちょうどいい高さになります(

鳳凰小屋を出てから約4時間30分・・・コースタイムの倍の時間を使って燕頭山に到着・・・

ここで小休止!と行きたいところですが、樹林帯の中にあっても燕頭山周辺は風の通り道になってます。
体を吹き飛ばすほどの風が吹いているため、長居すると低体温症の危険が高まります。
軽く仮眠したい・・・そんな欲望を振り切って足早に出発します。
でもですね、いいこともあるんですね。
なんとぉ!あるんです!トレースが!!!

頼もしき挑戦者さんが御座石温泉さんから登り、ここで力尽きたようです。
その残滓・・・俺たちが余さず使ってやるからな・・・安心して眠れ・・・
(普通に行きと帰りの足跡があったので間違いなく引き返しただけです)
トレースのおかげで下山はサクサクです。
気が付いたら西ノ平を通過。

標高はかなり下げましたがまだ雪が少し残る登山道を下ります。

雪がなくなったころに見えてくるのが御座石温泉さんの後ろ姿。

南御室小屋さんを出たのが朝の5時、そこから約10時間かけて御座石温泉さんに到着です!
強風で体力を奪われ、ノートレースで体力は底をつき、これは遭難するかもな・・・
と思うこともありましたが、なんとか無事の下山となりました・・・

2回はやりたくない・・・
■ さいごに

もう二度と登りたくない。
そう思わずにはいられない厳しい登山になりました。
南御室小屋までは長くダラダラと続く登り、
南御室小屋から先は急登となり、
薬師ヶ岳小屋から先は暴風に悩まされ、
鳳凰小屋から続くノートレース地獄・・・
よく帰ってこれたなというのが正直な感想です。
それもこれも暴風のせいなので、風がない日に登れれば、
白根三山と甲斐駒ヶ岳まで遮るものがないため死装束を纏った美しい姿を拝むことができます。
薬師岳⇔地蔵岳までの稜線も美しいの一言。
中央にあたる観音岳から薬師岳へ伸びる稜線はたおやかで美しく、
逆側にあたる地蔵岳へ伸びる稜線は厳しいアップダウンがあり地蔵岳の鋭利な雰囲気を強調してくれます。
厳しさと美しさの両方が楽しめた味わい深い登山になりました。